日本語では、字と字の間をあけずに組むのが原則ですが、時として、
文字と文字の間にスペースを設けます。
例えば、
を
とする場合です。
スペースを空けない場合は「仮想ボディ」と呼ばれる正方形にピタリと「あ」と「い」が収まっていました。
しかし、字と字の間にスペースを空けると、後半の「い」が仮想ボディの正方形からはみ出てしまいます。
この「字と字の間に設けたスペース」を
字間(カーニング)
とよんでいます。
編集者は印刷済みの書物から「字間」を求めねばなりません。
そこで使うのが、
印刷文字スケール
というアイテムです。
ここではその印刷文字スケールを活用して印刷物から字間を求める方法を紹介します。
印刷物の字間を求める方法
次の3ステップです。
文字の大きさ単位を把握する
印刷物が採用している文字サイズの単位を把握しましょう。
日本の出版物で利用される文字サイズの単位は次の3種類。
- 級数
- DTPポイント
- アメリカンポイント
日本では日本オリジナル単位「級数」が多く使われますが、次いで多いのが世界共通の「DTPポイント」です。
最後の「アメリカポイント」は、かつてJISが標準規格として定めた単位で、古い出版物でたまに使われます。
印刷物の字間を求めるためには、文字の単位の把握が第1歩。
多くの場合、出版物ごとに文字の単位が統一されているので、出版元に問い合わせるのが手っ取り早いでしょう。
文字の大きさを知る
続いて、文字の大きさを計測します。
印刷文字スケールを文字にあてがうだけ。
印刷文字スケールには、文字サイズごとに正方形(仮装ボディ)が連続的に並べられていますので、正方形の仮想ボディを当てはめていけばいいのです。
例えば、アメリカンポイントの印刷文字スケールの12のマスをあてがった結果、文字がすっぽり収まったとします。
その場合、
- アメリカンポイント
- 12 pt
それが文字の大きさです。
マス目と重なる文字を探す
印刷文字スケールを印刷物に押し当てると、正方形のマス目が文字とぴたりと一致します。
しかし、これは字間ゼロのベタ組の場合です。
字間があれば、マス目と文字の間にズレが生じます。
しかし、全ての文字がマス目とずれるのではありません。
何文字目かは必ず一致するはずです。
例えば、下図では5文字目の文字が印刷文字スケールの6マス目と重なっています。
計算式に代入する
ここで次の計算式を活用します。
$$\frac{一致したマス目の位置 – 文字の順番}{文字の順番 – 1}$$
です。
「一致したマス目の位置」をX、「文字の順番」をYを置くと、
$$\frac{X – Y}{Y – 1}$$
になるはずです。
例えば、一致したマス目が6、その文字が5文字目だった場合を考えます。
その場合、
$$\frac{一致したマス目の位置 – 文字の順番}{文字の順番 – 1}$$
$$=\frac{6 – 5}{5 – 1}$$
$$=\frac{1}{4}$$
になるはずです。
つまり、字間は文字サイズの4分の1(25%)なので「四分アキ」です。
1文字ごとに仮想ボディの4分の1ずれています。
なぜ印刷物の字間を求められるのか?
なぜこの計算式が使えるのでしょうか。
分子では「本来あるべき位置とのズレ」を表しています。
6文字目に本来来るべき文字が5文字目に現れていますので、
6文字で1文字ずれているとわかります。
これが分子の計算式、
$$一致したマス目の位置 – 文字の順番$$
が表すところです。
一方、分母では「字間の個数」を表します。
5文字目で印刷文字スケールの正方形と一致したします。
その場合、5文字目が来る前に4つの字間があるはずです。
- 1と2の間
- 2と3の間
- 3と4の間
- 4と5の間
字間の個数は「5-1」で4つになるはずです。これを一般化すれば、
$$文字の順番 – 1$$
で字間の個数を計算できます。
印刷物の字間を求める
はい、以上が計算式でした。
最後に例題を解きましょう。
- アメリカンポイント 10ポイントの文章
- 印刷文字スケールで8文字目の正方形で5文字目がぴったりとはまる
先程の計算式で計算すると、
$$\frac{一致したマス目の位置 – 文字の順番}{文字の順番 – 1}$$
$$=\frac{8 – 5}{5 – 1}$$
$$=\frac{3}{4}$$
になります。
つまり、仮想ボディ1つに対して75 %の字間があるので「二分四分アキ」です。
それでは!
Ken