【書評】小林三郎の「ホンダ イノベーションの神髄」を読んでエアバックを想ふ

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おまえら、新しいモノを創らない国や企業は滅びるんだよ!

とある大学の自動車に関する授業でのこと。

教壇にたった非常勤講師は、授業が始まるや否やこう叫びました。

ぼくを含めた学生の約9割が、

「は??」

「え・・・・」

のような困惑した表情を浮かべていたことでしょう。

そう。この講師こそ、「ホンダ イノベーションの神髄」の著者である小林三郎さんでした。彼は世界で初めてエアバックの実用化に成功した元ホンダのエンジニアです。約16年間の研究開発を経てエアバックという技術の開発に成功したそうです。現在はホンダを退職され、一ツ橋大学や中央大学で教鞭をとって余生を過ごしているそうです。

さきほど例に挙げた講義では、そのエアバックの開発の過程で苦労した話(重役の9割が反対)、イノベーションを起こすために必要なことなどを講義してくださいました。

小林三郎さんはほんとうにユニークな方です。冒頭のあいさつもしかり、一人称は東京の江戸っ子のような「オレ」。一度の授業を受講しただけで変人好きのぼくはすっかり彼のファンになっていました笑 今までの授業で最もエキサイティングなものでしたね。小林三郎さんの講義に興味がある方は下のアマゾンのリンクをご覧ください。なんとDVDも出しているそうで笑。サンプル動画らしきものがご覧になれます。さきほどチラ見しましたが、まさにこんな感じです。いやあ、もう一回受けたい授業です。

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今日は、その偉人であり変人である小林三郎さんの著者である「ホンダ イノベーションの神髄」という著作のレビューというか、書評というか、まとめみたいなものを書いてみます。良かったら参考にしてくださいね。

 

 

ホンダ イノベーションの神髄の3つの読みどころ

この本の内容をずばり一言でいうと、

エアバック開発とホンダ勤務の経験からイノベーションの本質を語った本

です。1971年から2005年までホンダで働き続け、エアバックの量産に成功させた小林三郎さんならではの著作です。

そんな「ホンダ イノベーションの神髄」の読みどころは以下の3つです。

 

1.エアバック開発の歴史をのぞける。

1987年に日本で量産が開始されたエアバック。残念ながら、平成生まれのぼくにとってはエアバックは物心つくまえというか、人間のカタチになる前から存在していたことになります。そんなぼくにとっては「エアバック」という技術はあって当たり前、なかったら狼狽します、のようなものです。

そんな今では当たり前になっている安全技術がどのように生まれたのか。どのような反対にあっていたのか。そこで著者がどのように逆境を乗り越えて実用化までこぎつけたのか。

ということが描かれています。たとえば、アメリカでのエアバック運用テストが終わり、日本での量産の承諾を得る経営会議でのエピソードがあります。

1986年秋に量産と商品化がホンダの経営会議に諮られた。前にも紹介したが、ここでもすんなりと量産の許可が得られず、十数人いた経営会議メンバーのうち三分の一が大反対した。暴発や不発のリスクを恐れてのことだ。残りの三分の二の役員からも賛成の意見はなく、実質的には反対という雰囲気だった。

この会議を想像しただけで足がすくみそうです。空気の重さが伝わってきます。それほどエアバックというものは暴発をおそれ、実用化に踏み切るには勇気がいる技術だったのです。衝突を起こした運転手の方を救えるが、ときどき暴発して普通の運転手の命を奪う。これでは安全技術として成り立ちませんし、ホンダという会社の信頼性を損ねてしまいます。そこで著者の小林三郎さんは、

世界で毎年10万人、毎日300人近くの人が交通事故で亡くなっています。エアバッグがあれば、この人たちの多くの命を救えます。我々がやらなければいけません。

のように安全に対する想いを語ったり、

エアバッグは故障率100万分の1の技術です。クルマの通常の機械部品の故障率は1000分の1.それを1~2ケタ上回る高信頼性技術がホンダに確実に根付きます

のようにエアバッグがホンダの信頼性を落とさないことを述べまくっていました。

その結果、1987年にエアバッグの量産が日本でスタートしたのです。16年の研究開発ですよ??小林さんとその研究開発チームの忍耐力に舌を巻きますね。

 

2.イノベーションを起こせない大企業病について

2つ目の見どころは、今はやりの「大企業病」についてわかりやすく説明しています。

まず著者は企業の業務には「オペレーション(執行)」と「イノベーション(創造)」の2種類あると論じています。そして前者が全業務の95%を占めるそうです。

本文の言葉を借りると、オペレーションとは、

データの分析と論理的思考によって綿密な計画を立て、計画通りに進めることが求められる。加えて100%の成功を目指すものだ

と説明されています。一方、イノベーションとは、

全く新しい商品や技術をゼロから開発することである。これは業務全体の5%程度だ。誰もやったことがないので、当然ながらデータはない。そのため分析や論理は役に立たない。そして9割以上は失敗する。しかし、成功した1割弱の中から将来に向けた成長の種が生まれてくる

と説明されています。

「オペレーション」:「イノベーション」=19:1

という比率なので、その両者に関わる人数比もおのずと似たようになります。つまり、役員の95%がオペレーション出身の社員になる可能性が高いことになります。しかも、そういうオペレーション出身のお偉いさんは採算のとれないイノベーションの種をつむぐことが多いそうです。

そのため、企業が歳をとるにつれてどんどん上層部はオペレーション出身の合理主義者だけになり、どんどん下から上がってくるイノベーションの種は死んでいくことになります。これが世間一般で言われている「大企業病」の本質である、と著者は言っております。うむうう、なるほろお

 

 3.イノベーションの源泉、ホンダの哲学

理念・哲学なき行動(技術)は凶器であり、行動(技術)なき理念は無価値である

本書によると、かつてホンダの創業者本田宗一郎はこういったそうです。この創始者の想いがエアバッグ開発当時のホンダにも残されていたそうです。著者は「ホンダのイノベーションの秘訣は何か」、という質問に対して、

ホンダには哲学があるから

と答えるようにしていたそうです。

そのもっとも根底にあるのが「3つの喜び」と「人間尊重」の2つです。

前者は「作る喜び」・「売る喜び」・「買う喜び」の3つから構成され、本田宗一郎は3つめの買って喜ぶことを重視していたようです。研究者やエンジニアが自己満足するような技術を開発するのではなく、お客様が買って喜ぶ商品を開発しよう、というものです。

一方、後者の「人間の尊重」はそんじょそこらにある「人間の尊重」とは異なります。ホンダ哲学における人間の尊重とは、

異端者や変人、異能の人を排除しないで尊重する

ことなのだそうです。これが独創的なイノベーションを起こす環境の源泉になっているそうです。イノベーションを起こすチームのメンバーは変わり者だらけとも語っています。たしかに小林三郎さんは変わり者でしたが笑 このホンダ発の「人間の尊重」が世の中に広く伝わればぼくも暮らしやすくなるんですがねえw

以下、「ホンダ イノベーションの神髄」より引用文

最後にこの本でよかった箇所・ココロに残った文章を引用しまくってこの記事を終了します。まだこの本を読んでいないという残念な方はぜひ読んでみてくださいね。きっとホンダの哲学とイノベーションに対する知識が深まるはずです。あ、あとそれとエアバッグについても。それでは。

小さなベンチャー企業として創業し、そこから数々のイノベーションを起こして成功した企業の創世記には、以下の三つの共通項目がある。①ユニークなリーダー(例えば本田宗一郎やスティーブ・ジョブズ) ②ろくでもない社員(社会一般の評価ではBクラス、Cクラスの人たち。Aクラスの人は小さなベンチャー企業には来ない) ③年寄りがいない それが今の日本の大企業は④普通のリーダー ➄有名大学卒の優秀な社員(成績が良くて記憶力と論理的判断力が高い) ⑥年寄りだらけ

イノベーションの現場の担い手たちは変わり者だ。イノベーションは、正規分布の中央部ではなく、端部から生まれるからである。ほとんど注目されていない領域からユニークな価値を発掘することがイノベーションである。だから必然的に、担当者はユニークな人、日本語にすれば変わり者、が多くなる。

うちはバイクとクルマを造っているが、人によっては向き不向きがあるはず。この分野で全員が100%の能力を発揮できるわけじゃない。輝くダイヤになるやつもいるけど、石のままのやつもいるだろう。だけど俺にとっては石もダイヤも同じくらい大事なんだ。だからみんな、一生懸命ベストを尽くしてくれ。ところで、今日はあんまりダイヤがいないなぁ(笑)。でも大体な、おまえら。人にぶつけるときは石の方が便利なんだぞ。

コンセプトとは、「お客様の価値観に基づき、ユニークな視点で捉えたモノ事の本質」のことである

本質とは現実と理想の間にあるものだ

本質をつかみ、それをコンセプトとして昇華させるには考え抜くしかないが、著者の経験からそのためのヒントが一つある。「面白いかどうか」を考えることだ。面白さには三つの要素があると考えている。「本質的」「ユニークさ」「前向き」の三つだ。本質的なことを知ると世界の見方が根本的に変わってくるし、ユニークな視点は好奇心を強く刺激する。この「本質的」と「ユニークさ」は、コンセプトの定義と重なっている。「前向き」については言わずもがなだ。

エアバッグの技術のコンセプトにおける次の大きな山は、高信頼性のコンセプトを確立することだった。エアバッグの故障率の目標は、クルマの使用期間うぃ通じて100万分の1以下。信頼度でいうと99.9999%、いわゆるシックスナインだ、

漢語や外来語ではなく、日本固有の大和言葉で考えてみることだ。特に商品のコンセプトを考える際に有効である。

俺はさあ、もうすぐ50歳だ。金はないけどよ、おまえの年に戻れるんだったら500億円だって払うぞ。若いというだけでそれくらい価値があるんだ。それなのに、お前は何をくだらないことを言っているんだ。そんな言い訳ばかりしていると、何もしないまま人生が終わってしまうぞ。そうやって生きていくのか

どんな技術や製品、システムや手法でも100点満点のものはない。
何か売り込みに来たら、問題点が絶対にあるはずだから、「問題点は何ですか」と聞け」

俺流の科学者の定義は「お金を使う人」。
一方、エンジニアの定義は「お金を稼ぐ人」だ。

「イノベーションを起こさない国と企業は必ず衰退する」ことは、歴史が証明している。何も新しいことをやらない経営陣は、ただ先輩の遺産を食い潰しているのである。一方、40歳を過ぎた人には、イノベーション力やイノベーション判断力はもうないということを認識した上で、いかに若い人たちを生かして新しいことを推進するかを真剣に考えてほしい。間違っても若い人のイノベーションを止める輩にはなってほしくない。

 

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